今週の金融市場では、米ワイオミング州ジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演が話題の中心でした。議長は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに踏み切る可能性を示唆し、ダウ工業株30種平均が1日で846ドル高となり史上最高値を更新(出典:jp.reuters.com)。株式市場では大手ハイテク株が買い戻され、半導体指数SOXが2.7%急騰するなど「利下げ期待」に支えられた強気ムードが広がりました(出典:jp.reuters.com)。
しかし週後半には、デル・テクノロジーズやエヌビディアなどのAI関連銘柄が軟調となり、米国株式市場は反落しました。デル株は約9%下落、エヌビディアも3日続落し(出典:jp.reuters.com)、AIインフラ投資のコスト増や競争激化への懸念が浮上しました。同時に、国内では新発10年国債利回りが1.615%と2008年以来の水準へ上昇(出典:jp.reuters.com)し、日銀の早期利上げ観測が高まりました。一方、東京都区部の8月コアCPIは前年同月比2.5%上昇と7月の2.9%から鈍化し、政府の電気・ガス料金負担軽減策によるエネルギー価格下落が物価上昇を抑える形となりました。
ヨーロッパでは、ECBが9月11日の理事会で政策金利を据え置く見通しながら、ユーロ圏経済が弱まれば年内に追加利下げを検討する可能性があるとロイターが報じています(出典:jp.reuters.com)。物価上昇率はECBの目標付近で推移しているものの、米関税の影響やウクライナ情勢への不透明感がリスクとなっているようです。こうした国際金融環境の変動が、株式・為替・債券市場に複雑な影響を与えた一週間でした。
それでは個別のニュースを見てみましょう。
FRB議長、ジャクソンホール会議で9月の利下げ示唆 ダウ平均が最高値更新
ニュース概要
米ワイオミング州で開かれたジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長が9月FOMCでの利下げに含みを持たせた講演を行いました(出典:jp.reuters.com)。これを受け、米国株式市場は反発し、ダウ工業株30種平均が過去最高値を更新しました(出典:jp.reuters.com)。
ニュース解説
ジャクソンホール会議は各国の中央銀行や学者が集まる重要な討議の場です。パウエル議長が「9月にも利下げに踏み切る可能性」を示唆したことで、金利が下がると企業の借入コストが減り、景気が下支えされるという期待が高まりました。その結果、投資家心理が改善し、株式市場が上昇したわけです。また、金利先物市場では9月利下げの織り込み度が約90%まで上昇しました(出典:jp.reuters.com)。
キーワード
ジャクソンホール会議 … FRBが主催する年次経済シンポジウムで、金融政策の方向性が示される場。
FOMC(連邦公開市場委員会) … 米国の金融政策を決定する会議。金利の引き下げや引き上げを決める。
利下げ … 政府・中央銀行が政策金利を下げること。企業や家庭の借入利率が下がり、景気刺激効果が期待される。
ニュースソース
【Reuters】米国株式市場=ダウ最高値更新、FRB議長の利下げ示唆を好感(出典:jp.reuters.com)
日本の長期金利、17年ぶり高水準に
ニュース概要
8月22日の東京債券市場で、新発10年国債利回り(長期金利)が1.615%と前日比1ベーシスポイント上昇し、2008年10月以来約17年ぶりの高水準となりました(出典:jp.reuters.com)。
ニュース解説
長期金利は、国や企業が長期でお金を借りる際の利息を反映する指標です。利回りが上昇するということは債券価格が下落していることを意味し、市場では将来の金利上昇(=日銀の利上げ)を織り込んでいます。金利が上がると住宅ローンや企業の借入金利も上がりやすいため、景気や企業業績に影響します。今回の上昇は米国の金利上昇や国内物価高への警戒が背景にあるとみられています。
キーワード
長期金利(10年国債利回り) … 国が10年かけて返済する国債の利回り。市場の金利水準を示す指標。
ベーシスポイント(bp) … 金利の単位で、1bpは0.01%。1.615%は161.5bpと表す。
債券価格と利回り … 債券価格が下がると利回りが上がり、価格が上がると利回りは下がる逆の関係にある。
ニュースソース
【Reuters】〔マーケットアイ〕金利:新発10年国債利回りが1.615%に上昇、約17年ぶり高水準を更新(出典:jp.reuters.com)
東京都区部の8月コアCPI、前年比2.5%上昇に鈍化
ニュース概要
総務省は8月29日、東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数=コアCPI)が前年同月比2.5%上昇し、伸び率が7月の2.9%から3カ月連続で縮小したと発表しました。エネルギー価格の下落幅拡大や食料品価格の伸び鈍化が要因です。
ニュース解説
CPIは一般家庭が購入する商品やサービスの価格変動を示す統計で、インフレの目安になります。東京都区部のコアCPIはエネルギー価格下落や政府の電気・ガス料金負担軽減策によって2.5%まで減速しました。ただし生鮮食品を除く食料は依然7.4%上昇し、米や加工品の値上がりが家計を圧迫しているのも事実。物価上昇が鈍れば日銀の追加利上げ圧力は弱まりますが、食料インフレが長期化すれば消費者心理を冷やす可能性があります。
キーワード
CPI(消費者物価指数) … 家計が購入する物やサービスの価格動向を示す指標。インフレ率の目安。
コアCPI … CPIから価格変動の大きい生鮮食品を除いた指数。物価の基調を捉えやすい。
エネルギー価格の下落 … 電気・ガス代の政府補助によりエネルギー費が下がり、物価全体の上昇を抑制した。
ニュースソース
【Reuters】都区部コアCPI、8月は+2.5%に縮小 生鮮除く食料の加速止まる
欧州中央銀行、景気悪化なら追加利下げの可能性
ニュース概要
ロイターは8月24日、複数の関係者の話として、欧州中央銀行(ECB)が9月11日の理事会では政策金利を据え置く見通しだが、ユーロ圏経済が弱まれば年内に追加利下げの議論を再開する可能性があると報じました(出典:jp.reuters.com)。
ニュース解説
ECBはユーロ圏19か国の金融政策を統括しています。現在の政策金利は2%と過去1年にわたる緩和策の休止状態ですが、景気が悪化した場合には利下げで景気を支える必要があります。記事によると、最新データでは物価上昇率が目標の2%近くで推移し経済は底堅いものの、米国からの関税やウクライナ情勢などが悪化すれば、10月や12月の理事会で追加利下げを議論する可能性があると指摘されています(出典:jp.reuters.com)。
キーワード
欧州中央銀行(ECB) … ユーロ圏の金融政策を担当する中央銀行。政策金利を決め、インフレ目標を2%前後に設定している。
政策金利の据え置き … 金利を現状で維持すること。景気や物価の動向を見守る姿勢。
追加利下げ … 景気が悪化したときに金利をさらに引き下げること。借入コストを下げて経済を刺激する。
ニュースソース
【Reuters】ECB、ユーロ圏経済軟化なら年内に追加利下げ議論再開も=関係者(出典:jp.reuters.com)
米国株式市場、AI関連株の下落で反落
ニュース概要
8月29日の米国株式市場は反落し、デル・テクノロジーズや半導体大手エヌビディアなどのAI関連株が下落しました(出典:jp.reuters.com)。デルは約9%、エヌビディアは3.4%下落して3日続落となりました。月間ベースでは主要3指数がプラス圏を維持していますが、AI関連株の高コストと競争への不安が重しとなりました(出典:jp.reuters.com)。
ニュース解説
AI関連銘柄はここ数年の株高を牽引してきましたが、サーバーなどインフラ投資の費用や競争激化で利益確保が難しいとみなされると株価が急落することがあります。今回の下落は投資家がAIブームの持続性に慎重になっている表れと言えます。一方で、アリババなどクラウド関連株が急騰する場面もあり、市場の物色は二極化しました(出典:jp.reuters.com)。FRBの利下げ観測が残る中で月間ではS&P500が1.9%、ダウ平均が3.2%上昇しており(出典:jp.reuters.com)、短期的な調整と見る向きもあります。
キーワード
AI関連株 … 人工知能分野の企業の株式。デルやエヌビディアなどが代表的。
反落 … 株価が前日までの上昇後に下がること。利食い売りや材料出尽くしで起こる。
S&P500 / ダウ平均 / ナスダック … 米国を代表する株価指数。市場全体の動向を示す指標。
ニュースソース
【Reuters】米国株式市場=反落、デルやエヌビディアなどAI関連株が安い(出典:jp.reuters.com)
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