10月12日から18日の週は、米国市場の乱高下と金価格の連続最高値更新が話題になりました。週初は前週の急落の反動で主要株価指数が急反発しましたが、米中貿易摩擦が再燃すると再び売り圧力が強まり、地方銀行の信用不安も相まって不安定な展開となりました。その一方で、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、雇用市場が減速していることから「今後数か月で利下げに踏み切る可能性がある」と発言し、金利低下観測が高まりました。米国政府閉鎖は17日目を迎え、国家核安全保障局の職員の約80%が一時帰休になるなど、行政機能への影響も深刻です(出典:dlapiper.com)。米中貿易摩擦を巡っては、中国がレアアースやリチウム電池材料などの輸出規制を発表したのに対し、米国が全ての中国製品に100%の関税を課すと表明し、貿易戦争が激化する懸念が高まりました(出典:fredlaw.com)。
テクノロジー分野では、生成AIのインフラ投資が相次ぎました。OpenAIとブロードコムは、データセンター用のカスタムAI加速器を10ギガワット規模で共同開発する長期契約を締結し、2026年後半から2029年にかけて展開する予定です(出典:openai.com)。また、ブルーム・エナジーの固体酸化物燃料電池に対してブルックフィールド資産運用が50億ドルを投資し、AIデータセンター向けの環境配慮型電力供給を目指す計画も発表されました(出典:reuters.com)。国内では日本銀行が1月の利上げ以降も物価動向に応じて引き締めを継続する姿勢を示し、年明けには政策金利が0.75%まで上昇するとの観測が出ています(出典:noortrends.ae)。一方、日本のメガバンク3行(MUFG、三井住友FG、みずほFG)は、企業間の決済に利用できる円ペッグのステーブルコインを共同発行する枠組みを検討しており、デジタル資産による決済インフラ整備が進みそうです(出典:coindesk.com)。
大型の金融取引にも注目が集まりました。中東のエミレーツNBDはインドのRBL銀行の60%を約30億ドルで取得し、急成長するインド市場への本格参入を図ります(出典:reuters.com)。フランスの高級ブランドグループ、ケリングは美容事業をロレアルに40億ユーロで売却し、負債削減と主力ファッションへの集中を進めます(出典:reuters.com)。それでは個別のニュースを見てみましょう。
米国市場の乱高下と金価格の連続最高値
ニュース概要
10月13日から17日の米国株式市場では、貿易摩擦の発言や銀行決算に反応して主要指数が上下動を繰り返しました。週初はトランプ大統領がSNSで中国との関係改善に言及したことでナスダックが2.2%、S&P500が1.6%上昇し、金先物は3.1%高の1オンス=4,125ドルと史上最高値を更新しました(出典:investopedia.com)、(出典:investopedia.com)。しかし翌14日はトランプ氏が大豆貿易の停止を示唆し、ナスダックが0.8%下落するなど再び売り優勢となりました(出典:investopedia.com)。16日にはザイオンズ・バンコーポレーションの不良債権処理によって地方銀行株が急落し、SPDR S&P地域銀行ETFが6%下落、金価格は再び4,323ドルまで上昇しました(出典:investopedia.com)。17日にはトランプ氏が「100%関税は持続可能ではない」と発言したことで、主要指数は週末にかけて反発し、週次ではナスダックが2.1%の上昇で終えました(出典:investopedia.com)。
ニュース解説
この週の米国市場は、米中貿易摩擦に関する大統領の発言やFRBの金融政策観測に敏感に反応し、前日比で1%以上の上下動が続きました。先週の急落で割安感が出たこともあり、13日はハイテク株中心に買い戻しが広がりましたが、14日には再びトランプ氏が中国との貿易に関する強硬姿勢を示したため売りが優勢となりました。また、ザイオンズ銀行の50億ドル規模の不良債権処理が明らかになると地域銀行株が急落し、信用不安が広がりました。安全資産としての金が買われ、1オンス4,323ドル、翌日には4,392ドルまで一時上昇するなど連日で史上最高値を更新しました(出典:investopedia.com)、(出典:investopedia.com)。週末には関税強硬策が見直されるとの見方から株価は回復しましたが、金利と景気の先行き不透明感が残っています。
キーワード
- 米中貿易摩擦 … 米国と中国の関税や輸出規制を巡る対立。政策発言一つで株価が大きく動く。
- 地域銀行ETF … SPDR S&P Regional Bank ETFのように、米地方銀行株をまとめた投資信託。構成銘柄の信用不安が出ると指数全体が急落する。(出典:investopedia.com)
- 金先物 … 将来の金価格を約束する取引。経済不安が高まると安全資産として買われる。
ニュースソース
(出典:investopedia.com)、(出典:investopedia.com)、(出典:investopedia.com)、(出典:investopedia.com)
米国政府閉鎖が長期化
ニュース概要
米国の連邦政府は予算が成立しないまま部分的に閉鎖されており、10月17日で17日目に達しました。国家核安全保障局(NNSA)では約80%の職員(約1,400人)が一時帰休となり、核兵器の安全管理に影響が出ています(出典:dlapiper.com)。地方自治体も連邦補助金の遅延により、住宅、交通、公共衛生などのプログラム資金が不足しつつあり、一部では準備基金の取り崩しや税収予測の変更を検討しています(出典:dlapiper.com)。
ニュース解説
政府閉鎖は議会が予算案に合意できない場合に発生します。通常は短期間で解決されますが、今回は17日間続き、過去三番目の長さとなりました。政府機関の職員の大部分が給料なしで自宅待機となり、重要なインフラや安全保障業務にも遅延が生じます。特にNNSAでは核弾頭の維持や安全監査を担当する専門職員が不在となり、安全上の懸念が高まっています。また、各州は連邦補助金が途絶えると教育や医療などのサービスが縮小するため、州政府の財政負担が増加します。
キーワード
- 政府閉鎖(Government Shutdown) … 連邦予算が成立しないため政府機関が一時的に業務を停止する状態。給与支払いやサービス提供が停止する。
- 一時帰休(Furlough) … 職員に休業を命じる措置。給与は支払われず、閉鎖解除後に職場復帰する。
ニュースソース
(出典:dlapiper.com)、(出典:dlapiper.com)
OpenAIとブロードコムが10GW規模のAI加速器を共同開発
ニュース概要
生成AI大手のOpenAIと半導体大手のブロードコムは、データセンター用の専用AI加速器を10ギガワット規模で共同開発する長期パートナーシップを発表しました。OpenAIがチップとシステムの設計を行い、ブロードコムはイーサネットなどネットワークソリューションと製造プロセスを担当します。展開は2026年後半から2029年に予定され、AIの計算需要拡大に対応することが目的です(出典:openai.com)。
ニュース解説
生成AIモデルは膨大な計算資源を必要とし、従来の汎用GPUだけでは性能と電力効率が課題となっています。OpenAIは独自設計のAIアクセラレータを開発することで、特定用途に最適化されたハードウェアとソフトウェアの統合を実現しようとしています。10GWという規模は大型火力発電所数基に匹敵する電力消費を持つデータセンター群を支えることを意味し、AIインフラ投資の巨大さを物語ります。ブロードコムにとってもネットワーク事業の拡大と高付加価値ビジネスへの参入につながります。
キーワード
- AI加速器 … 機械学習の計算に特化した専用チップ。GPUより省電力で高性能を発揮することが多い。
- データセンター … サーバーやネットワーク機器を大量に収容する施設。AI処理需要の増大に伴い大規模化している。
ニュースソース
(出典:openai.com)
日本銀行が引き締め姿勢を維持
ニュース概要
日本銀行の内田真一副総裁は講演で、物価と賃金が上昇を続ける限り金融引き締めを継続する意向を示しました。日銀は2025年1月に政策金利を0.5%へ引き上げ、17年ぶりにマイナス金利政策を終了しています。市場では2026年1月までに政策金利が0.75%程度まで引き上げられるとの観測があり、9月の会合で複数の審議委員が即時の利上げを主張したものの、新政権の経済運営を受け慎重な姿勢が広がっています(出典:noortrends.ae)。
ニュース解説
日本では消費者物価が2%台で推移し、賃金の伸びも続いています。日銀は長年続けてきた異次元緩和政策を転換し、インフレ率を安定させるために段階的な利上げを進めています。景気の持続的回復を妨げない範囲で政策金利を引き上げる方針ですが、世界経済の減速や米中貿易摩擦など外部要因による不確実性も大きく、金融政策の道筋はデータ次第となっています。
キーワード
- 政策金利 … 中央銀行が市中銀行に貸し出す際の基準金利。金利を引き上げると景気抑制効果がある。
- インフレ率 … 物価の継続的な上昇率。日銀は2%程度の物価安定目標を掲げている。
ニュースソース
(出典:noortrends.ae)
メガバンク3行が円建てステーブルコインを共同発行へ
ニュース概要
三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3行は、企業間決済に利用できる円ペッグのステーブルコインを共同発行する計画で合意しました。三菱UFJが開発するデジタル通貨プラットフォーム「Progmat」を基盤に、各行が発行するトークンを相互に交換・移転できるようにします。将来的には米ドルなど別通貨建ての発行も検討されており、国内決済のデジタル化を促進する狙いです(出典:coindesk.com)。
ニュース解説
ステーブルコインは法定通貨に価値が裏付けられた暗号資産で、価格変動が小さいため決済や送金に適しています。国内の大手金融機関が共同で発行することで、既存の銀行預金と同様に安全性と信頼性が担保され、企業がブロックチェーン上で迅速かつ低コストに資金移動できるようになります。日銀が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討を進める中、民間のステーブルコインがどのように共存するかも注目されます。
キーワード
- ステーブルコイン … 法定通貨や資産に連動し価格が安定する暗号資産。決済手段として利用される。
- Progmat … 三菱UFJが開発するブロックチェーン基盤。証券やデジタル通貨の発行・管理を可能にする。
ニュースソース
(出典:coindesk.com)
ブルームエナジーへの50億ドル投資とAIデータセンター
ニュース概要
資産運用大手のブルックフィールドは、燃料電池メーカーのブルーム・エナジーに最大50億ドルを投資し、AIデータセンター向けにクリーンな電力を供給する計画を発表しました。この投資はブルックフィールドのAIインフラ戦略の第一弾で、欧州を含む複数地域でAI「工場」を建設する予定です。発表後、ブルーム・エナジーの株価は約24.5%上昇しました(出典:reuters.com)。
ニュース解説
AIデータセンターは大量の電力を消費するため、環境負荷の高い火力発電に依存すると温室効果ガス排出が増えます。固体酸化物燃料電池は天然ガスやバイオガスを使って発電し、従来の発電より効率が高く、CO₂排出量を抑えられるのが特徴です。ブルックフィールドはこの技術を用いてAI施設にクリーン電力を供給し、データセンター運営の脱炭素化を進めます。AIインフラ投資は半導体だけでなく電力面のイノベーションも求められていることを示しています。
キーワード
- 固体酸化物燃料電池 … 高温で作動する燃料電池で、電力変換効率が高い。ブルーム・エナジーが商用化している。(出典:reuters.com)
- AIインフラ … AI処理を支えるハードウェア、電力、ネットワークなどの基盤。需要増加により投資が活発化。
ニュースソース
(出典:reuters.com)
米中貿易摩擦激化:レアアース輸出規制と100%関税
ニュース概要
中国政府はレアアース、製造設備、リチウム電池材料などの輸出を制限し、複数の外国企業を「不信任企業リスト」に追加しました。この動きに対し、トランプ米大統領は中国からの全輸入品に100%の関税を課すと表明し、重要ソフトウェアの輸出規制も検討すると述べました(出典:fredlaw.com)。両国は交渉を続ける姿勢を見せているものの、交渉が決裂すれば貿易戦争が再燃する可能性があります。
ニュース解説
レアアースはハイテク製品や電気自動車のモーターに不可欠であり、中国は世界生産の大部分を占めています。輸出規制により、米国や他国の製造業は供給不足やコスト増に直面する恐れがあります。米国の100%関税は中国製品の価格を大幅に引き上げ、企業や消費者に負担を与えます。貿易摩擦の激化は世界経済成長を下押しする要因であり、国際通貨基金(IMF)も両国が合意に達して「実体経済への重大な悪影響」を避けることを望んでいます(出典:reuters.com)。
キーワード
- レアアース … 電子部品や磁石に使われる希少金属。供給の多くを中国が担う。
- 関税 … 輸入品に課される税。高率関税は貿易相手国への圧力や国内産業保護に用いられる。
ニュースソース
(出典:fredlaw.com)、(出典:reuters.com)
大型クロスボーダー金融案件:RBL銀行買収とケリングの美容事業売却
ニュース概要
ドバイ拠点のエミレーツNBDは、インドのRBL銀行の60%を約30億ドルで取得することで合意しました。これはインド金融セクターにおける最大規模のクロスボーダー買収であり、同国の急成長する銀行市場に対する信頼を示しています(出典:reuters.com)。一方、フランスのケリングは主力事業に集中するため、香水ブランド「クリード」などを含む美容事業をロレアルに40億ユーロ(46億6,000万ドル)で売却します(出典:reuters.com)。
ニュース解説
エミレーツNBDによるRBL銀行買収は、インドの銀行業界が高成長とデジタル化を背景に魅力的な投資先となっていることを示します。資本増強によってRBL銀行は資金調達力を高め、サービス拡充が期待されます。ケリングの売却は負債削減とブランド戦略の再構築が目的で、自由になった資金をファッション事業に集中させる方針です。高金利と経済減速が続く中、企業はコア事業への集中や財務健全化を進める動きが目立ちます。
キーワード
- クロスボーダー買収 … 国境を越えて行われる企業買収。規制や文化の違いがハードルとなるが、成長市場への進出手段として使われる。
- デレバレッジ … 企業が負債を減らし財務体質を健全化すること。
ニュースソース
(出典:reuters.com)、(出典:reuters.com)

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