欲が招く誘惑
ある程度勝てるようになってくると、頭をよぎるものがあります。「もっと勝率を高くしたい」とか「もっと安定したトレードにできないか」と…。
ここまで苦労して検証して、手法として定義して、ようやく勝てるようになった。しかし、それが思ったより大変だとも気付かされる時期でもあります。そうすると、もっと安定した状態にしたい。もっと勝率を上げたい。という思いが芽生えてきます。そう。それは人間の「欲」ですね。
逆張りの罠
こうして、高勝率を狙うことにすると、得てしてそれは「逆張り」に流れがちです。前章「イントロダクション」でも書きましたが、全部見えているチャートで「安いところで買って高いところで売る。」実はそれは、逆張り前提なんですよね。そして、日本人は「逆張り」が大好きだという話をよく聞きます。「天底」(注:天底=相場の最安値や最高値)を当てたがるんですね。そしてそれが「トレードがうまい人」のイメージなんだと思います。しかし、それは間違っています。天底を当てる事自体うまくいくものではないんですね。なぜかって?それは大衆心理を無視した丁半博打だからです。
逆張りナンピンの誘惑
そんな中で一筋の光明が現れる時があります。その方法は本当に素晴らしいんです。勝率は非常に高く、場合によっては100%に近くなることもあります。エントリーも結構雑でも行けます。チャンスもやたら多いです。なので心理的にも楽です。そしてそれは、逆張りのその先。高勝率を追い求めた先にあるもの。それは、
『逆張りナンピン』
知っている人は「あー」と思うでしょう。そう、逆張りナンピンは高勝率・高安定を追い求め、逆張りに進んだその先に見える一筋の光明…に見えるんです。実際私も経験しました(笑)。最長で2年間、ほぼ負けなしです。「そんなに素晴らしい手法なの?」知らない人はそう思ってしまうかもしれません。それこそが最大の罠なんです。そして比較的簡単に勝ててしまうからこそ、やめられない。どんどんエントリーが荒くなる——それでも結構勝てますから。
清算を迫られる日
その先はどうなったかって?それほどの高勝率であってもいつかは負ける日が来ます。しかし、逆張りナンピンの恐ろしさは、その構造上、「勝ちはごくごく小さいけど、負けは巨額」という事です。そして、2年間かけて積み上げた利益を一気に持っていかれます。結局、巨額な掛け金をかけてわずかな利益を得る事で、結果的に高勝率を得ているだけなんですよね。例えれば、100万円を掛けて100円を狙うようなものです。
身を切る覚悟がありますか?
そして、高勝率にはもう一つの罠があります。それは「負ける=損失を受け入れる」という事に慣れる機会を失ったままという事です。ちょっと考えて見てください。2年ぶりのロスカット——それも資金の大半を失うロスカット。あなたはそれを冷静にできますか?
これが高勝率のもう一つの罠です。勝率が高ければ高いほど、損失に対して慣れる事がなく、そのたびに打ちのめされる事になります。そして、基本的には勝率とリスクリワード(注:リスクリワード(レシオ)=トレードにおける損失(リスク)と利益(リワード)の比率)はトレードオフ。高勝率という事は、高リスク低リワード。それが時間分割で見えなくなっているだけです。
ナンピンがもたらす感情的なトレード
本来トレードはエントリーした瞬間にすべてが決まります。準備がすべてなんです。しかし、その中で「ナンピン」を許容してしまうと、エントリーした後にリカバリーできる可能性を残すことになります。エントリー後の値動きに一喜一憂して祈る傾向の強い人には、これほど「心理的に楽」になる事はないですね。「エントリーしてもそのあとで何とかなる。」それはトレードを狂わせ、計画的なトレードを感情的なトレードに変えてしまいます。
安心感の代償
高勝率や安定を追い求めて得られる安心感は、一瞬の心地よさを与えてくれます。しかしそれは、麻薬の高揚感にも似ていて、依存すればやがて大きな代償を払うことになるのです。そしてその代償は、あなたが積み上げてきた時間と資金すべてかもしれません。少なくない人が、たった数回のトレードで退場せざるを得なくなっているという事実を知っておいたほうがいいですね。
初心者と中級者の分水嶺
ひとつ前の章「トレード初心者が必ずぶつかる壁|全部勝とうとしてない?」で明らかにした「勝ちたい気持ち」と今回の「高勝率」。どちらも「欲」の結果であり、ここを乗り越えるかどうかが初心者と中級者を分ける分水嶺だと私は思っています。感情を排し、冷静に計画的にトレードをすることができるようになることが中級者への最低限の条件です。まずは「勝ちたい」という気持ちを抑えて、確率論を認め、計画に従って淡々とトレードすることこそが王道だと気づくべきなんです。それに気づけなければ、永遠に初心者のままです。
第一章:トレード初心者が必ずぶつかる壁|全部勝とうとしてない?↗
次回予告
次回はその先にある「改善」の壁について——「第三章:トレードの改善が逆効果になる理由|正しい修正の仕方」でその部分に触れていきたいと思います。
このシリーズの構成
以下は『勝てない理由シリーズ』の全体構成です。公開済みの章にはリンクがあります。
イントロダクション↗
第一章:トレード初心者が必ずぶつかる壁|全部勝とうとしてない?↗
第二章:高勝率トレードの罠|安定を求めるほど負けやすくなる理由
第三章:トレードの改善が逆効果になる理由|正しい修正の仕方
第四章:過去検証で勝てるのに本番で負けるのはなぜ?|カーブフィッティングの落とし穴
第五章:トレードの必勝法を探し続けても勝てない理由|聖杯探しの末路
第六章:トレードで唯一コントロールできること|勝ち続けるための武器
第七章:なぜ9割のトレーダーは負けるのか?|その決定的な原因とは
第八章:トレードで勝ち続ける人だけが知っている真実|私がたどり着いた答え


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